一度手術を受けると、少しずつ楽になり、2度目からは「多少他人に悟られてもいいから不自然にならない程度に、できるだけ若くしてください」と望む人が多くなります。また、周囲の人に、若くなったと驚かれたり、手術したことをうらやましがられたりすると、そのうれしさで、手術への抵抗感がすっかり消し飛んでしまう傾向も見受けられます。ただ、住んでいる土地柄によっては、そう単純ではないこともあります。まだ少し傷が目立つ手術直後に美容室に行って、シワとりの手術をしたことがわかってしまい、こわがられて断られたり、陰でこそこそうわさされたり、いやみを言われるなど、日常生活に支障をきたすほどのいやがらせにあったという大変気の毒な話も耳にします。そのようなことがないように、手術前に十分周囲の受け入れ状況や、自分自身の手術に対する心の準備などについて、整理して臨む必要があります。「受けたい人みんなが、シワとりの手術を公然と受けられるような世の中になればいいのに……」とつぶやく患者さんの声を聞くたびに、アメリカのように、芸能人や、さまざまな領域の有名人たちがフェイスリフト手術を堂々と受けて、劇的に若返った手術前後の写真が、日常的に雑誌に紹介されるようになるまで、日本はあと何年かかるのだろうかとため息が出ます。
内臓脂肪(=狩りのための脂肪)と皮下脂肪(産み、育てるための脂肪)の減り方の違いについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。そのためには、まず人間に蓄えられているエネルギーが「いったいどういう順序で使われていくのか」について理解しておかねばなりません。そこで、いま仮にあなたがマラソンをしているとして、あなたの体内のエネルギーがどういう順番で使われるかをたどってみましょう。まず、あなたが走り始めていちばん最初に使われるのは筋肉の中にためられたエネルギーです。これはATPといわれる熱産生サイクルによるエネルギー。陸上の短距離選手などに筋肉モリモリの人が多いのは、この筋肉にため込んだエネルギーを一気に消費するため。だからあんなにすぐ、爆発的なスピードが出せるのです。でも、そのことからも分かるように、筋肉にためられるエネルギー量には限界があり、100〜200メートルも走ればすぐエネルギー切れになってしまいます。次に使われるエネルギーが、肝臓にストックされたグリコーゲンです。よくマラソン選手は試合前にバナナなどを食べていますが、これはグリコーゲンが使われるのを少しでも遅くしようとしているため。ただ、いずれグリコーゲンが動員され、その貯蔵はどんどん減ります。肝臓にためられるグリコーゲンは数十グラムほど。ちょっと汗をかけばすぐになくなってしまい、マラソンなんかすれば、すぐにカラっぽになってしまうのです。では、どうするのか。そこで次に使われるのが内臓脂肪にストックされたエネルギー。これは体のエネルギーが枯渇したときのために、すぐ取り出せるように内臓の近くに保存してあるエネルギーです。つまり、筋肉や肝臓のエネルギーを使いきってしまったときのためのサポートエネルギー。それが内臓脂肪なのです。いま、あなたが走っているのが道路ではなく、果てしない荒野だったとしましょう。あなたは狩りに出たのにもかかわらず、何日もなかなか獲物にありつけません。そんな精も根も尽き果てたある日、なんと目の前に大きなトナカイが…。そういうときに、この内臓脂肪がエネルギーとなって力を貸してくれるというわけ。つまり、いまでこそすっかり悪者にされてしまった内臓脂肪ですが、なかなか食べ物に恵まれなかった時代は、活動のためになくてはならない、まことにありかたいサポートシステムであったわけです。
どうしてグレープフルーツジュースをのむと、薬が効きすぎてしまうのだろう。その原因は、「フラボノイド」といわれる成分にある。グレープフルーツ独特のあの苦みになっている成分だ。通常、口からのんだ薬は食道を通って胃に入り、胃から腸へと移る過程で溶け、十二指腸から小腸の間で吸収される。腸で吸収された薬は、静脈を通って肝臓へ運ばれる。肝臓には、異物や体に不必要な物質を解毒するはたらきがあるため、薬もそこで分解されることになる。ただ、一度では分解しきれないので、血液の循環に従って何度も肝臓を通過しながら徐々にその姿を消していくことになる。フラボノイドはこの肝臓の解毒作用をストップさせてしまう。そのため、ひどいときには血液中の濃度が丁度よい濃度の何倍にもなり、副作用を引き起す危険性もある。しかし、全ての薬にこういった相互作用が起きるわけではない。いまわかっているものでは、降圧薬のほか、精神安定薬や免疫抑制薬の危険性が心配されている。これらの薬を服用する際には、グレープフルーツジュースに気をつけたほうがいいかどうか、医師に確認をとる必要があるだろう。発想を転換して、グレープフルーツジュースの作用をいかし、いままでよりも少ない量の薬で、効き目をコントロールすることはできないかという研究もすすめられている。いずれ、「降圧薬はグレープフルーツジュースと一緒にのんで下さい」というように、薬の処方の仕方も変わってくるかもしれない。それまでは、服用前のグレープフルーツの飲食は我慢しなければいけない。どうしても飲みたい、食べたいという場合には、薬が肝臓を完全に通過し終わる二〜三時間後が望ましい。